考えてみた

AI時代“弁護士”は必要なのか?

こんにちは、イスラエル女子部代表の三木(MIKI ALISSA)です。今日はAI時代における、弁護士の意義を考えてみました。

2014年激震。AI時代で消える職業とは?

2014年、オックスフォード大が発表した「The Future of Employment(雇用の未来)」で、AIの技術の発展より消滅する職業が発表され、日本でも大きな話題となったのは覚えていますか?

当時大学生だった私は朝の通学途中に週刊現代でその詳細を知り、あまりの衝撃で途中で電車を降りてじっくりと読んだのをいまだに覚えています。

この記事に出会うまでは「コンピューター=人間にとって便利になる」もので、ずぼらな性格上“楽ちん社会よ、万歳!”とばかり未来を明るく思い描いていましたが、何だか奈落の底に落とされた気分でした。

消滅する職業と、消滅しない職業

 

Internet Watchより引用

 

さて小言はここまでにして、具体的に論文内容をご紹介しますね。Internet Watchでは具体的な職業と奪われる確率までデータが揃っているので引用します。

図の左側に「AIに奪われそうな職業」として、データ入力、融資担当、モデル、スポーツ審判、会計事務、電話オペレーター等を上げています。

確かにデータ入力は、AIが溢れていない今現在も既に音声入力に置き換わっていますよね。また「自分がモデルに!オンラインブランで着せ替え!サービス、拡充の嵐!」でも述べたように自分の体に服を着せる事が可能な社会においては、通販“モデル”は必要ないのも、わかるような。

一方AI時代でも活躍できるのは、右側の医者、教師、カウンター、学芸員、作曲家、デザイナー、エレクトロニクス技術者、弁護士としています。

なぜ“弁護士は安泰”なのか?

ではAI時代になぜ弁護士は安泰なのでしょう?それは「弁護士の“社会的知見”」を「クライアントの“意図に沿った提案”が可能」だから、とレポートでは表現しています。

私自身、本業では新規事業開発担当としてイスラエルのハイテクベンチャーと日本の企業をつなげており、その際のNDAや契約書の締結などで弁護士さんに相談することがあります。

今アドバイスいただける弁護士さんは非常に優秀で、単に法律違反かどうかのチェックではなく、その先の「○○条項は××というリスクをはらんでいます。××リスクは△△という影響がありますが、~~のスタンスである貴社は飲めますかねぇ?」とまでアドバイスをもらえます。

特にこの「~~のスタンス」がポイントで、私(クライアント)の意図にそわず、ただリスクを言われても微妙です。

例えば、リスクはあってもその後のビジネスが広がりそうだとか、あるいは、スモールビジネスだからリスクは全く取れないだとか…。同じリスクでも立場によっては、そのリスクの処理判断ができないのです。

以上のように、クライアントの立場や心情までのパーソナライズ化はAIは出来ないけれど、弁護士なら寄り添えて知見を提供できる。だから、AI時代弁護士は安泰だ、と考えられているのでしょう。

本当に、弁護士は必要なのか?

ただ、それは、本当に真実なのでしょうか?そこで、

  • ①弁護士が持つ社会的知見は、AIの方が判断が早くて正確なのではないか?
  • ②パーソナライズ化は、果たして本当にAIができないのか?

をポイントに見ていきます。

①弁護士が持つ社会的知見は、AIの方が判断が早くて正確なのではないか?

この疑問に挑戦しているのが、イスラエル発「LawGeex」です。世界のスタートアップスを紹介しているメディアTechStartupsでも「SaaS型AIリーガルチェックのLawGeexは、1,200万ドル(12.9億円)をベンチャーキャピタルのAlephより調達した」と報じらました。

VCのAleph は、今をときめくシェアオフィスのWeWorkだけではなく、「イスラエル発、注目度大!ユニコーン企業たち」でもご紹介したP2P型保険サービスLemonadeにも出資をしている実力のあるチームです。(個人的には、このAlephという名前が怖いのだけど… 若い世代に伝わるか!?笑)

さて、この「LawGeex」は1万ものNDAを元にディープラーニングし、20人のアメリカ人弁護士たちと比較実験を行いました。

実験詳細

この実験では、あらかじめスタンフォード大などで教鞭をとっている元弁護士たちが、実際によく起こりうるケースを想定して5つのNDAを準備しました。このNDAは、A4サイズの用紙11枚・153段落の中にリーガル的問題箇所を30個を散りばめて、AIと弁護士に同じNDAを渡し「完成までの所要時間」と「リーガル的問題箇所を指摘できたかの正確性」と、を比較しました。

なお20人の弁護士たちは、ゴールドマンサックス、シスコなどの契約経験のある優秀な弁護士をピックアップしている(とのことで弁護士界も本気度を感じますね。)

結果は…?

まず、「所要時間」が弁護士平均92分に対して、26秒でAIは完成させ、単純に210倍もAIの方が早かった…と。(これは何となく、結果が想像できていましたよね)

では、問題は正確性です。

残念ながらAI94%、弁護士85%となり、正確性でもAIの方が勝っている…とわかりました。(何をもって正確性と判断したのか、詳細な情報がでてきていないのは、悪しからず)

また、合わせて、弁護士たちは12杯のコーヒーを飲むが、ロボットはいらないと…。なんともムカつくデータまで公開しています(笑)

日本にもAIリーガルサービスが出てきた!

なお4月17日のTechCrunchでは、日本のリ―ガルチェックを行う「AI-CON」の紹介がされていました。

楽天元代表取締役副社長の島田亨氏、Evernote Japan元会長の外村仁氏、チェンジ代表取締役兼執行役員社長の福留大士氏、楽天元執行役員の尾原和啓氏、ランサーズ元CTOの田邊賢司氏、セールスフォース・ベンチャーズ日本代表の浅田慎二氏ら6人がアドバイザリーボードとして同社に参画しており、これまでに一部のアドバイザーを含むエンジェル投資家とチームメンバーから約6500万円のシードマネーを調達している。

と、名だたるメンバーが入っていると…。他にも「LegalForce」も日本語向けに開発しているといい、日本にもリーガルテックが開発されつつあるようです。

プチまとめ

正直弁護士との比較実験データの数がまだ「LawGeex」だけなので、なんとも判断しにくいのは現状ではありますが、所感としては、知見においてはAIの方が強そうに思えてなりません。

 

②パーソナライズ化は、果たして本当にAIができないのか?

では、次に「AIではパーソナライズされた提案ができないものか」見ていきます。これに対しても、私は懐疑的な考えを持っています。

というのも、PRESIDENT Onlineや「アマゾンが描く2022年の世界」で紹介しているAmazonの「0.1人セグメンテーション」を見れば、もう既にパーソナル化はできつつあると、言わざるを得ないからです。

これまでのセグメンテーションは学歴・職業など表層的な情報をもとに区切っており、きわめて荒いものでした。しかし、ビッグデータとAIを組み合わせて個人を特定した「0.1人セグメンテーション」では、ユーザー1人1人・一刻一刻のリアルタイムなニーズを把握することができるといいます。ニーズが把握できれば、その解決策の提案をすればいいだけです。

つまり、弁護士の「人に寄り添ったパーソナライズ化」は人間にしか提供できない、とは言い切れなくなりました。

(まぁ考えてみれば、離婚事由の第一が「性格の不一致」と言います。夫婦でさえ、お互いのニーズを提供できないのだから、ましては他人である弁護士ができるのか…? うーん。違うかな?)

本当に、弁護士が消えるのか?

では、AI時代全く弁護士が生きる方法がないのでしょうか?

さすがに、これは言い切れないと思っています。具体的には「“新しい技術・サービス”が適法なのかどうか」ジャッジにおいては、まだソリューションがないような気がします。

豚はダメでもクローン豚ならOK?

例えば、今イスラエルでは、クローン豚は食べていいのか議論が行われています。

30年後、イスラエルは1500万人を突破する」でも述べた通りイスラエルの国民の74.5%がユダヤ教徒です。このユダヤ教は「イスラエル人を知るなら!オススメ本3選」にもある通り、「祈る」宗教ではなく「学ぶ」宗教で、2000年以上も前に生きるために必要な事項をルールのように纏めて教典としています。ご飯にも厳格ルールを設けていて、その中の1つに豚肉を食べることを許していません。

しかし、Newsweekによるとユダヤ教徒が食べてよい食べ物コーシャに、クローン豚は入ると考えている権威がいます。

クローン豚の消費を認めれば激しい議論が起きることは、シャルロー(権威あるゾーハル・ラビ協議会の倫理部門の長を務め、イスラエル保健省の倫理委員会のメンバー)も承知の上だ。しかし、この解釈は「不浄な」動物の骨が混入したゼラチンを食べてもよいという判断を踏襲したものにほかならないと、彼は言う。

「ユダヤ法解釈のそうそうたる権威が動物由来のゼラチンをコーシャに分類した。生産過程で風味を失い、食肉としての性質を失うため、もはや食肉とは見なされず、ユダヤ法の規定には当てはまらないからだ」

()の補足は加筆しました。

旧約聖書が誕生した2000年以上も前に、こんなクローン豚が誕生する未来がくるだなんて、誰が想像できたのでしょう…(笑)

本質的な議論を行う存在が、弁護士

以上の事象のように、AI時代において弁護士たちは、例えば顧問ローなど顧客のニーズにそった契約書を作ることではなく、「新しい技術・サービスが適法化どうか、議論をリードし、ジャッジする」より概念的で本質的な議論を行う存在になっていくのだと思います。特にテクノロジーの進化スピードは目覚ましく、そのニーズはますます増えていくことでしょう。

その中で重要なのは、弁護士も発想を飛ばす“ある種クリエイティビティ”が必要だということ、と思っています。知識を詰め込むだけではない、議論をどう広げ盛り上げ掘り下げられるのか、そんな弁護士に未来があるような気がしてなりません。

最後に

たまたまこの2週間で「リーガルテック」や「古典理論×新技術」の情報があつまったため、自分なりにAI時代における弁護士の活躍方法を考えてみました。

 

https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/732993.html

 

このレポートが出している、数値3.5%は、果たして正しいのかー?AI時代の到来を待つばかり。

私もAIに駆逐されないように、日々精進あるのみです。

AI時代“弁護士”は必要なのか?” への2件のフィードバック

  1. わかりやすい記事をありがとうございます。Deep Learningで仕事をしている者としての考えを少し述べたいと思います。弁護士業務は言うまでもなく言葉が中心的な役割を果たします。現在のDeep Learningはまだ、言語を「理解」するレベルにはありません。Google翻訳の精度は相当上がりましたが、人間のレベルを超えるのはやはり限定的な範囲だけだと思います。弁護士業務は法律に基づくことだけをやれば良いのであれば、今でもコンピュータは良い仕事をすると思いますが、人間の行動を理解するのに法律論のみに限定して良いかはちょっと懐疑的です。いつブレークスルーが起きて大きく技術が発展するかはなかなか予測できませんが、弁護士業務を完全にコンピュータに代替するのは10年はかかるような気がしてます。まあ10年後は、ほとんどの仕事は今の形ではないとも言えますが。。。興味深いテーマですね。

    1. としさん
      素敵なご意見をありがとうございます。代表の三木です。
      この記事は、「弁護士=AI時代でも生きていける」という風潮に、少しでも石を投げられたら…と思い書きました!

      ご指摘の通り、弁護士業務がすべてとってかわるのか、というと、私も違うような気がします。
      とはいえ、記事でも記載している通りNDAなど型のある業務においては、AIの方が優秀なのは事実です。

      つまり、今のママ胡坐書いていると、大変な未来になるよおお…と伝われば、と思っています。

      引き続き素敵なコメントよろしくお願いいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です